
フィリップ・ホ−
グリップ(米国)
マトリックス:
『マトリックス』続編におけるあなたの主な仕事は何ですか?
フィリップ:
私はフリーウェイのシークエンスではカーリギング・キーをやり、ザイオン寺院のセットでは撮影クルーのオンセット・キーでした。
マトリックス:この映画に参加したきっかけを教えてください。
フィリップ:私は映画製作を約15年間やっていて、たくさんのリギングの仕事をやります。LAで撮影された多くの映画では、リギング・キーでした。また、ここベイエリアではプロダクション・グリップとリギング・キーとして2、3作品に参加しました。1月(2001年)にトニ−・マズーキ(キー・グリップ)と話をしたんです。彼に仕事させてもらうよう申し込み、承諾してもらいました。彼はカメラ・グリップか、カメラの取り付け、吊り下げやカメラのフライングなどに直接取り組めるグリップを探していたのです。ちょうど私の経歴は、これらの分野をカバーしていたため雇ってもらえたというわけです。
マトリックス:アラメダでのプロダクションにはどれくらい参加しているのですか?
フィリップ:2月中旬か下旬頃(2001年)から参加していると思います。
マトリックス:フリーウェイ・シークエンスでのカーリギング・キーの仕事には何が必要でしたか?
フィリップ:フリーウェイ・シークエンスでは、1台〜9台のカメラが同時に使用されていました。トニ−は撮影隊のメインのプロダクション・パートを扱っていました。そして、カメラを車内、車の上、屋根の上、車の周りに取り付けたり、インサートカーやトウ・トレーラーにカメラを取り付ける必要がある場合は、私の管理で全てのカメラが安全であるようにしました。カー・シークエンスは時速50マイルで行われ、何台かの車は壊れました。しかし、一度車内に設置されたカメラは全て固定され、動かすことはきません。それがフリーウェイ・シークエンスでの私の重要な仕事でした。我々は一日に3〜20のリグを取り付けていましたね。おそらく2、3千フィートのスピード・レールを使っていましたが、いつも足りないぐらいでしたよ。
マトリックス:フリーウェイでは安全が重要事項ですね。
フィリップ:安全は常に重要です。人間の体の一部ではない物が車に取付けられている場合は、それが緩む恐れがあるため、安全に関わる問題となります。その車を運転しているドライバーにとってだけではありません。車外に取り付けられたカメラが撮影中に外れた場合、後ろを走っているドライバーにとって危険になります。インサートカーの場合は、クレーンやたくさんのカメラが載っています。全てのカメラ・オペレーターは安全でなければなりません。誰かが、気付かないうちに落ちてしまうことは避けたいのです。撮影時は、自分のことに集中して、周りで何が起こっているかは分からないものですから。
マトリックス:ここでの「安全」について説明して下さい。
フィリップ:カメラカーに乗っている人は皆、装着帯を付けています。そして車自体に繋げられています。ですから彼らが車から落ちることはありません。また我々は彼らをきつく縛り付けているので、カメラの前で必要な事をする以外あまり動くことはできません。
マトリックス:車の外に人が張り付いている状態で、スタントドライバーとはどのようにコミュニケーションを取ったのですか?
フィリップ:R.A(ロンデル/スタントドライバー)はスタントドライバーと全ドライビングチームの責任者です。彼らが出発するまで、全てが順序正しくブロッキングされています。彼らは勝手に出発してドライブすることはできません。全てがカメラカーやタイミングといった一連の動きでブロックされているのです。彼らは運転しながらどこに行けばいいのかを知るためにブロッキングを見ます。そしてそのブロッキングで車を止め、駐車するというわけです。速度も設定されています。R.Aに言われるまで誰も速度を変えることは出来ません。テイクは通常遅いスピードで撮影され、徐々にスピードを上げます。ですから多くのシークエンスを時速0マイルで始めているというわけです。フリーウェイでの我々の速度は時速50マイルということになっていて、ほとんどのシークエンスはこの速度で撮影されたと思います。彼らは、車がお互いに通り過ぎる時の間隔を、8インチから2フィートと、かなりタイトに設定してましたね。
マトリックス:オートバイのシーンでは何か違う方法がありましたか?
フィリップ:2台のオートバイがありました。一つはサイドハッカーやサイドカーと呼ばれるものです。そしてリブラ・ヘッドを前か後に取り付けられるシングル・モーターサイクル・マウントを持つ男がいました。リブラ・ヘッドとはスリー・アクセス・ローテーション付き自動安定カメラです。これは高いところ、低いところ、そして前にも後ろにも取付けられます。オートバイを使ったシークエンスは、ほとんどこのモーターサイクル・リグで撮影されています。サイドカーはチェイス・シーンのアップクロース・ショットとタイトショットに使用されました。また、サイドカーはシングルマウントが無線操作できるので、アシスタントとカメラオペレーターが乗れます。
マトリックス:フリーウェイ・シークエンスでは、以前に経験したことのない事などありましたか?
フィリップ:驚くほど早くて、驚くほどタイトでした。アクションはしっかり振り付けされていなければなりませんでしたし、全てがとても危険で困難でした。でも、その走りは美しく、信じられないものでした。最高のチームがいたし、素晴らしい人々が私のために仕事をしてくれました。ケニー・フェルプス(グリップ)、ジミー・スチュワート(グリップ)は、おそらくベストのカー・リガ−と言えるでしょう。素晴らしいカメラ・マウンティング・チームでしたよ。
マトリックス:公園のセットではまた違ったチャレンジがありましたか?
フィリップ:我々はフリーウェイ、大きなブルー、小さなブルー、そして公園のセットに参加しました。公園のセットはグリップにとっておそらく最も簡単なセットでした。ファイト・シークエンスでは、アクションを見るのと同時に、デジタル作業のための適切な量の照明が必要でした。あのショットはワイドで、多くのアクションがあったからです。シーンでは、主に一つのキーライトを当て、エレクトリシャンが取り付けた頭上の照明で背景を埋めました。宙を飛ぶアクションがたくさんあり、直立コンベアにカメラを一台取り付け、カメラの下に男を吊るし、ネオに向かって落下していくというシーンを撮影しました。
また私はスタント・リガ−と組み、カメラを男の肩ごしに吊るして下に吊るされた男と共に降下させました。この男の肩ごしのワイドショットで、この男と地上の男が入るというショットです。最も重要な事は、シークエンスを作ることと、カメラアクションが人物を追い、同じ位置で人物と共に動く事でした。ですからカメラは絶対に人物から離れてはいけません。しかもこの人物は落ちながら演技をしているので、バランスを取らなくてはなりませんでした。とても難しいショットでしたね。
マトリックス:過去の映画でそのようなショットの準備をしたことはありましたか?
フィリップ:全ての映画は全く違います。たくさんのビル群があって、そこから撮影するとします。最も重要な事は、監督と撮影監督がどのようなショットで何を求めているのかを知ることです。なぜなら、実際に撮影する以外、そのショットを事前に見ることはできないからです。実際に彼らの考えるショットを撮影するためには、これらの人々からの情報があればあるほど、我々はやり易くなるのです。
過去の経験について言えば、国中で多くのリギングやフライングの仕事をしましたね。『グリンチ』のスタント・リガーではたくさんのフライングをやりました。この映画に出てくる山では、カメラをどこにも置く事ができませんでした。ですから私はテクノ・クレーンに100×100XYZグリッドを取り付けました。これによりセット中を飛び回ることができたので、どこにでもカメラを置けるようになりました。『ジェイド』でもカメラ・リガ−でしたが、一日で7台から30台のカメラを取り付けました。そして何百ものスタントカーも取り付けたんですよ。私の仕事は、それがどんな映画かということを知り、自分をどこで最大限に活かせるかにかかっています。
マトリックス:プレ・ヴィジュアライゼーションが多くの映画で使用されています。監督がショットに何を求めているのか理解するため、これらを参考にしましたか?
フィリップ:多くの点でとても役に立ちましたよ。なぜなら、一日の始まりに、カメラをどこに置くのか、特にカーシークエンスではフリーウェイのどちら側を撮影するのか、車のどちら側に置くのかなどの概要が分かるからです。ショットが実際どのように映るのかは全く別になります。それは監督と撮影監督次第で、彼らが求める方法で撮影されるからです。しかし、何を求めているのかという大まかな内容はそれから分かりますからね。
マトリックス:大小のブルーのセットについてコメントした時は、ブルースクリーン・ステージのことを指していたのですか?
フィリップ:ええ。ブルースクリーン作業です。大きなブルーはブルースクリーンの周りに270度で巻き付けられていて、大きなリグが関連したカースタントの大がかりなシークエンスに使用されました。人物が大きなリグと共に移動するショット、大きなリグの上をジャンプするシークエンス、大きなリグの間を通り抜けるシーンも撮影しました。いくつかのオートバイシーンやその他のショットも撮影しました。それはとても難しいセットです。アクションがとても大がかりなので、広い範囲をブルースクリーンで覆って、人物のアクションが常にブルースクリーン内にあるようにしなければなりませんでした。私の主な役割は、これらの人物が常にブルースクリーンで覆われているようにすることでした。また頭上にブルースクリーンを吊るすことや、これらを移動することも私の仕事でした。床にはマイラーパネルを置き、照明を当てる代わりに、他のブルースクリーンに当たっているライトを反射させました。ですから少ないセット照明で済みましたね。
マトリックス:ツインズがクレーンからひっくり返る、ブルースクリーンのセットアップには参加していたのですか?
フィリップ:いいえ、あれはスタント・リガ−です。ア−ロンとデイブ・シュルツ(ユーティリティー・スタント)がここでの主なスタント・リガ−で、パット・ロマーノのスタンツ・リミテッドに所属しています。私がスタント・リガーに参加する場合は、完全にカメラシークエンスに関係していなければなりません。ザイオン寺院のセットで使われたフライング・カメラのためには、ソリを作りました。我々がそれらのポジショニングの手助けをし、タイミングを考えました。全てがこのショットのために行われたのです。スタント・リガ−はウインチ、減速ウインチに関わる仕事は何でもやります。これらのリギングは全て彼らの仕事です。
スタント・リガ−はカメラをザイオン寺院のセットの上に吊るしました。これはハイライン・カメラ・リグと呼ばれるものです。誰がやるのかにもよりますが、シングル・ハイラインとダブル・ハイラインがあります。そして二つのウインチとドライブウインチ、垂直リフト・ウインチがあります。ハイライン・カメラ・リグとは、レールを引けない、頭の高さかそれ以上の高さの空間をカメラが移動するショットです。
それらは完全に360度パノラマ式になるか、広い範囲の人々をカバーするワイドレンズになります。セットアップには時間がかかりますが、技術的には難しくありません。そして物凄く美しいショットが取れるのです。
マトリックス:ザイオン寺院のセットでは全てのショットに参加し、何百人ものエキストラが作り出すエネルギーを感じたと思いますが。
フィリップ:まるでロックビデオを撮影しているようでした。人々のエネルギーを感じましたね。とてもエキサイティングで、まさにレイヴのようでした。あのショットはとても特別なものになるでしょう。監督は本当に楽しんでいました。彼らは全てのショットの後、実際に参加していました。彼らもあのエネルギーが気に入ったのです。
マトリックス:これらのセットはあなたが以前参加したものと比べてどうでしたか?
フィリップ:ザイオン寺院はとても大きなセットです。私が参加したセットで最も大きいものは『ホーンティング』でした。18,000平方フィートのセットでしたが、ザイオンのセットもこれに近いかもしれません。『ホーンティング』は全く違いました。あれは完全に城の内部でしたから。空間で言えば、ここのセットは大きいのですが、ザイオン寺院以外、セットの外側で仕事をするスペースがあまりないのです。残りのセットはとてもタイトで、ブルースクリーンが完全に空間を埋め尽くしていました。ですから、ショットに写らないよう我々はいつも片方の端から反対側まで機材を追っかけてましたよ。
マトリックス:脚本を読む機会はありましたか?
フィリップ:脚本は読みました。どれがどのシーンになるのか全て知っていますよ。
マトリックス:続編というものはオリジナルと比べるとがっかりするものです。脚本を読んだ時、脚本家/監督は既成概念の枠を超えたと思いましたか?
フィリップ:それは答えるには難しい問題ですね。第一作は大いに楽しみました。実は大きなスクリーンではなく、ビデオで見たんですが、どれほど素晴らしい映画か分からなかったんです。『マトリックス2』はとてもうまく撮影された映画になるでしょう。しかし前作より良いかというと、実際に座って見てみるまで何とも言えません。この映画での私の役目は後一週間で終わります。そして彼らは更に6〜8週間オーストラリアで撮影することになるでしょう。映画を見るのが楽しみですよ。
マトリックス:ありがとう、フィリップ。
Interview by REDPILL
June 2001
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